なんか生きてくしかないらしいぜ

けれどもそれでも、業が深くて、 なほもながらふことともなつたら、

誕生日だった。

 少し前、誕生日だった。

 

 昔は誕生日があまり好きではなく、特に大学生時分では誕生日を祝われることが苦手だった。

 周囲が自分のことを見て、自分が歳を重ねたことに「おめでとう」と言う。ときにはプレゼントまでくれる。嬉しくて、ありがとうと返しつつ、なんだか居心地が悪くて怖くて、嫌い。そう思っていた。

 

 今年の誕生日は、少しだけれど変化があった。

 誕生日当日。共通のジムに通っている母が帰宅して、

「スタッフさんがきょうは娘さん来るんですか?って言ってたよ」

 その日は午前営業のみの日で、急いで準備をしないと間に合わない時間になっていた。これまでの自分なら、「怖いから行くのやめとこ」と家に篭っていただろう。

 だって嫌だろう、友人に誕生日を祝われるのも怖いのに、店のスタッフに祝われることが分かって、しかも待っているとまで言われて、わざわざ行くなんて。

 けれど私は行った。「行かなきゃな」と思った。こわい思いもあったけれど、それ以上に、「自分の誕生日を祝おうとしてくれて待ってるとまで言ってくれたんだから、行かなきゃ」と思った。それは強迫的な思いではなく、義務でもなく、自分の意思で感じた穏やかな「行こう」だった。

 大抵の人には普通の思考かも知れないけれど、私には人生で初めての考えだった。

 結局準備は間に合って、ジムに行ってスタッフにおめでとうと言われて、ちょっとしたプレゼントをもらって、割と素直に、「ありがとうございます」と言えた。

 なんだかちょっと人間に近づけたようで嬉しかった。

 

 という、個人的な記録。

 お祝いをくれた人ありがとう。

 来年はまたもうちょっと、上手に生きたいな。