なんか生きてくしかないらしいぜ

けれどもそれでも、業が深くて、 なほもながらふことともなつたら、

真に好きな生き方を選べる人は限られているけどそれを分けるものはなんだろうか

 

 表題の通り。

 最近よく考えている。

 

 あるだろう。

「天職です」「これ以外の仕事はできないと思う」

 そういうものに出会えて、選べた人は幸福だ。いや、選んだのかそれは。まあ選んだんだろう。

 

 絵描きしかできないような人間が、絵描きを仕事にしているかと言われれば必ずしもそんなことはないし。

 俳優しかできないような人間が、俳優として生きていけるかと言われれば必ずしもそんなことはないし。

 会社員ができないような人間が、会社員にならず生きていけるかと言われれば必ずしもそんなことはない。

 

 ひとは大体の場合においてなにかしらの職に就く必要に迫られ、自分の環境と能力と経済力なんかを鑑みつつやれそうな仕事をする。

 

 天職と言うものを持ち、それを続けていられるひとは少ない。

 

 かくいう私の職も天職ではない。さんざんいろんな職業を転々としてきて、業界で言うと2.5個目くらいを数える。今の仕事はこれまでと全く違うけれど、その前の2つの職業の業界はちょっとだけ被っていたので。

 仕事はまったく嫌じゃない。むしろちょっと、最近楽しい。でもそれが天職かと言われるとそんなことはないし、それ以外の仕事はできないのかと言われてもそんなことはない。

 ほかの仕事だってやれるだろう。ただ、きっとどれも天職にはなり得ない。

 

 やりたい職業はあった。アマチュアでならいまもしている。職にできていれば、生きていくだけの金銭をそれで稼げたのなら、「これ以外の仕事はできないと思う」と私は言っていたのだろうか。

 好きなこと、やりたいことが仕事になるひとばかりではないし、天職につけるひとばかりではない。これ以上なく好きなことを仕事にしているひとでも、それが天職かと言われるとやっぱり否定するひともいるのだろう。

 

 職として成り立たせることができ、天職であり、それ以外に職ができないひとは稀で。

 すべてがそろっている状態のことを、ひとは「才能がある」という。